エモい、昭和歌謡

昨晩観たテレビで、外国に行ってその辺の人に声をかけ、知っている日本の歌があれば歌ってもらう、みたいな企画をやっていました。

意図的に編集しているのかどうかはわからないけど、披露されたのはほとんど昭和歌謡でした。(でも宇多田ヒカルの「First Love」は、平成の曲ですが常に別格です)

最近は日本でも「エモい」と言って、若い人達にも人気のようです。

ちなみに「エモい」とは英語のエモーショナル(感情的な様、情緒的な様を意味する表現)が由来となった、「あるものを対象に何とも言い表せない気持ちになる」と言う若者言葉で、「切ない」とか「感傷的」とか、哀愁を含んだ感情になった時に使われるようです。知らんけど。

と知ったかぶりたいところですが、小心者の私は少し前までこの言葉を知らなかったので、時代に乗り遅れないようにと慌てて調べました。

何となく恥ずかしいので自ら使う事はありませんが。

でもそれを知って「なるほど。確かに昭和歌謡はエモいな」と思いました。

とは言え「エモい」と言う言葉なんかでは表現できない何かこう、モヤモヤした気持ちにもなるのです。

私は昭和生まれですが、平成の歌でも令和の歌でも好きな歌は沢山あります

聴くとその時々の思い出が蘇り、しんみりしたり元気が出たり。

でも昭和歌謡となるとちょっと話が変わってきます。

何故なら、自分が人生で一番多感な時期に聴いていた曲だからです。

子供の頃の、色や匂い、光と影、どこだかわからない風景や、飛び飛びのシーンを繋ぎ合わせた様な混沌とした記憶の中に、しっくりと収まって一体化している歌や音楽。

初恋や失恋、将来への希望や不安など、思春期に人生で初めて味わう様々な感情と昭和歌謡は、切り離そうと思っても切り離せません。

一曲一曲がその頃の時代や空気そのものを含んでいる、そんな感じです。


昔の友達と飲みに行った帰りにカラオケボックスに入ると、最初は最近知った歌を歌うのに、段々懐メロ大会になって、最後の方にはどうかしたら泣いてたりしますものね。

なので昭和の人が昭和歌謡を聴いて感傷的になるのは当然と言えば当然ですが、それを言うならそれ以降の年代の人達にも同じ事が言える訳です。

平成時代に成長期を過ごした人は、平成の歌を聴いて同じ様に感じるかもしれないし、今後は令和の歌でもそうでしょう。

昭和歌謡にあまり触れたことがない今の若い人達に昭和歌謡が人気があるのは、レトロでオシャレな感じとか、TikTokで踊りやすいとか、他にも色々理由があると思いますが、その心情は正直言うとよくわかりません。

成長期に息を吸う様に昭和歌謡を取り込み、一曲一曲が血となり肉となっている昭和の人間には、昭和歌謡を客観的に評価する事は出来ない様に思います。

まあ、私が昭和世代の代表という訳では無いのであくまで一意見ですし、昭和歌謡が再注目されて聴く機会が増えたのは嬉しい限りです。

ふと思ったのですが、令和に昭和歌謡TikTokのダンスを一生懸命練習した若い人は、その思い出と昭和歌謡が一体化して、いつかその音楽を聴いた時「エモい」と言うスラングを超えたむせかえる様な懐かしさを覚えるのかもしれませんね。

その時は、昭和歌謡を自分たち昭和世代の所有物の様に語ってごめんなさい、と先に謝らせていただきます。